映画『Most Likely to Succeed』を観て①

先日、Future Edu Tokyoによる『Most Likely to Succeed』の上映会に行ってきました。

「AIやロボットが生活に浸透していく21世紀の子ども達にとって必要な教育とはどのようなものなのか」というテーマのドキュメンタリー映画です。

メモを取るのも忘れて見入っていたので不正確なところもあるかもしれませんが、大変素晴らしい映画だったので自分の記憶を頼りにあらすじと感想を書いてみたいと思います。

映画は、アメリカの小学校に通う一人の女の子が授業に集中できず、退屈して過ごしている様子から始まりました。先生が前に立って話し、生徒は机に座って話を聞くという日本でもごく一般的に行われている授業スタイルです。

この授業スタイルは1800年代、プロイセン(ドイツ)が、より強く従順な軍隊を作るために考え出した教育システムが原型で、アメリカがこれを取り入れたのは、工場を効率よく稼働させるため。同じ知識、技能を有する標準化された人材を沢山育成したいというニーズに合致していたからなのでした。

1900年から2000年の間、この学校教育を受けた人達が困る事は、ほぼありませんでした。大学を卒業すれば就職し、家を買って家族を養い、人生を全うできる時代がしばらく続きました。

が、AIやロボットの出現で多くの仕事が消滅した事により、それはもう過去の話となりました。

今、必要とされているのは工場の働き手ではなく、新たな仕事を創り出す事ができるクリエイティブな人材です。ところがアメリカの学校は依然として100年前と同じ教育スタイルを続けており、結果、企業は人材不足に悩んでいるのです。

そうした状況の中注目されているのがカリフォルニア州サンディエゴの公立チャータースクール(学費が無料でユニークな教育を受ける事ができる学校)、High Tech Highです。映画ではこの学校の様子をじっくり取材していました。

授業の初日、指示通りに机と椅子を並べる事にさえ戸惑う高校生達。先生が意見を求めても教室はシーンとしています。アメリカの学生は自分の意見がしっかりと有り、ディスカッションも得意というイメージがあったので意外でした。

この学校の先生は生徒に自分の考えた自由なカリキュラムやらせて良い事になっています。その一方で一年契約です。これにも驚きました。一年契約で良い人材は集まるのでしょうか。

しかし先生方が生徒達に提案したプロジェクトは素晴らしいもので感動しました。それは「グループに分かれ、一年かけて世界の様々な文明がどうやって始まりなぜ滅亡したのかを学ぶ。そしてそれを表現する作品を作り発表する」というものだったのです。

地理、天候、政治、経済、そして人間の心について・・・多くの事を考えなければこのレポートをまとめる事は出来ないでしょう。そこには、最初とはうって変わって生き生きと話し合ってる生徒達の様子がありました。まさにアクティブラーニングです。

次に自分達の考えを表現する段階になります。映画ではコンピューターを使ってデザインした歯車を組み合わせた作品を作るグループの生徒と、演劇を計画したグループの生徒に密着していました。

このプロジェクトは保護者、地域住民に発表することになっています。ところが生徒同士の意見はなかなかまとまらず、段取りも悪く、果たして期日に間に合うのか、観ているこちらもハラハラするカオスな状況です。

でも生徒達はそれを乗り越え、出来上がった作品は大変ユニークで素晴らしいものでした。歯車の作品は今まで見たことがない独創的な芸術作品でしたし、演劇のプロジェクトは、ある文明を現在の中東情勢に置き換えた非常に興味深い試みでした。

同時にこの実体験を通して生徒たちの問題解決能力、チームワーク、忍耐力、リーダーシップ、時間管理能力といったソフトスキルが成長していくのが分かりました。

この生徒達が将来社会人となって未知のクリエイティブなプロジェクトを与えられたら、きっと水を得た魚のように活躍すると思います。そして世界のさまざまな問題で困っている人に有効な支援を出来る人材にもなり得るでしょう。

これこそ「AIやロボットが生活に浸透していく21世紀の子ども達にとって必要な教育とはどのようなものなのか」という問いの一つの答えだと感じました。

続く

※このブログの文章、写真の無断転載を禁じます。

1件のコメント

現在コメントは受け付けていません。