①多読について

先日、NPO多言語多読が主宰する多読支援者養成講座がおこなわれ、成城楓塾で多読支援をしている長女と二人で参加させて頂きました。

辞書を使わず、面白く読める簡単な英語絵本をたくさん読みなさいという多読。楽しく読みたい本を読んでいるだけで留学するわけでもない。それなのになぜ英語力が向上する生徒が現れるのか?

この現象は、英語教育者の中でも注目され、研究対象となっています。

この日の講座の講師は、都内有名進学校で帰国英語科主任をお務めになり、その他の中高一貫校の多読アドバイザーも兼任しながら、多読の実験講座を実施されたことがある先生でした。

『多読的アプローチを支える言語論』というタイトルで、そもそも言語は、ヒト特有の認知能力を使って20年もの時間をかけて。他のヒトと生活する環境の中で、必要にかられて習得するものだ、とお話しされました。

ヒト特有の認知能力とは、一つは自分と他者の心を感じる能力。二つ目は言葉を何度も聞いているうちに、そこから普遍的な言語をつかみ取ることができるという、パターン認識能力。

絵本を読むことによって、絵をじっくり見ながら物語に入り込み、自分と他者の気持ちを感じることができるし、繰り返し同じ言葉を聞く体験もできる。
つまり、絵本を読むことは、言語を習得するために必要な認知能力を使い、鍛えることになる。
だからこそ、英語絵本をじっくりたくさん読むことが、英語力をつけるために有効なのだ、というお話でした。

絵本を読むのが子どもにとって良いということは、もちろん経験的に知っていましたが、そういうメカニズムがあったのかと非常に勉強になりました。
日本語の絵本を読んでいても同じようなことが起こるのだろうと思います。

また多読はmassive input、つまり大量に読むことが必須であること、言語の習得には関係性、言葉を使う目的が必要で、そのために絵本の読み聞かせ、サマリートーク、ブックトーク(自分が読んた本について話し合う)が有効であるというお話がありました。

私は以前、一人で通って一人で読むスタイルの多読講座に通っていましたが、せっかくの素晴らしい蔵書の中からどの本を読んで良いのか分からず結局挫折しました。

一方NPO多言語多読は、毎回グループに参加するスタイルで、時間の終わりには必ずブックトーキングがあります。不思議なもので、ネットで検索しても興味が湧かなかった本が、目の前で人が紹介してくれると読んでみたくなったりする事が多々あり、何度も「読みたい本が見つからない」という状況から救われ、多読を継続できています。

依存症やグリーフケア等、困難な状況を乗り越えるために経験者でグループを作って活動することはピアサポートと呼ばれていますが、ブックトーキングもピアサポートに近い面があるのかもしれません。

現在多読は、読むだけでなく、多視聴(英語の動画を字幕なしで視聴する)、シャドウイング(聞こえた通りの音をそのまま発音する)、多書(間違いを気にせず一定時間ひたすら書き続ける)・・・といったさまざまな方法を並行しておこなう事も奨励しており、さらなる進化を続けています。(そのため多く読むだけの多読と区別してtadokuと表記するようになってきつつあります。)

ブックトーキングのようなグループのサポート力を利用する事も含めた、こうした多読からtadokuへの広がりは、言語の習得についてより深く考えればこその進化であり深化でもあると感じました。

最後に多読の定番となっているOxford Reading Treeシリーズがなぜ教材として優れているのか、その理由等を話し合い、その折には長女も積極的に発言し、経験に基づいた説を唱えていました(これについてはまた改めて書こうと思います)。

成城楓塾の多読では、子どもに注意深く選んだ良い教材を提示して、まず絵をじっくり見ながらストーリーを構築して楽しんでもらい、その後に音声を聴くようにしています。上述の二種類の認知能力の刺激となるように、これからもこれらを丁寧に行っていきたいと思います。

また、今も音声を聴いた後、多読ノートに感想を自由に書いてもらっているのですが、これがサマリートークやブックトークのような効果を発揮するように、これからも工夫しながら続けていきたいと思います。

続く

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